風流夢譚事件

前回ふれた『明仁さん、美智子さん、皇族やめませんか』という本の中で、著者の板垣氏が、深沢七郎の短編小説『風流夢譚』は「闇の中に消され、読むことはできない」と書いているのが気になった。

この小説は、『中央公論』1960年12月号に掲載され、翌年2月1日「嶋中事件」と呼ばれる右翼少年による殺傷事件の原因になった。当時の中央公論社社長・嶋中鵬二の自宅に押しかけた少年が、夫人に重傷を負わせ、お手伝いさんを殺害した。

小説の内容は、夢の中の革命騒動で、皇族の首が飛んでいたり…という、アブない荒唐無稽な内容。夢の中では起こってもおかしくないし、フィクションに書かれても問題はないはず。しかし、出版社の社長宅のお手伝いさんが殺されてしまった…。

同社長は、被害者なのに、掲載の非を認めざるを得なかった。作者の深沢七郎は涙で記者会見し、その後の数年間、雲隠れせざるを得なかった。この作品は、その後、二度と出版・掲載されることはなく現在に至る。出版・言論界がテロに屈した汚名を残す、象徴的な事件とされる。

僕自身は、1970年代の前半に、同級生が貸してくれた海賊版を面白く読んで返した。その後、ある区立図書館から掲載号が何の問題もなく借りられたので、また読み、コピーも取った気がする。

さて、ネットで検索すると、この作品を全文掲載したサイトもあり、その気になれば簡単に読める。著者はネットを使っていなかったので知らないのかもしれない(この本の刊行は2006年1月)。

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