ある進水式

僕は実際には出席したことはないが、大きな船の進水式には身分の高い女性が招かれテープカットをするらしい。その女性は、古代ヨーロッパの信仰や伝説に由来する「海の女神」の代役ということのようだ。比較的身近なところでは、造船会社の役員の奥さんだったりするらしい…。

1995年1月17日の夜、神戸でひそやかに、ささやかな進水式が行われたという。阪神大震災の当日である。僕が震災から数年後に三菱重工神戸造船所を訪れ、そこで働く人々に聞いた話である。

震災はある船の進水式の日の朝に起こり、神戸造船所も至る所で建物や設備が壊れていたという。そんな中でも、当日の夜に、進水式は行われた。招かれた女性ゲストは、イギリス首相を退いていたマーガレット・サッチャーだった。翌日の新聞に、進水式のことは1行も書かれなかったという。

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