二・二六:磯辺浅一VS木戸幸一

筒井清忠『二・二六事件とその時代――昭和期日本の構造』を読んだ(一部飛ばし読み)。

最も興味深かったのは、第五章で、精神史的にではなく、国家改造をめざしたクーデターとして二・二六事件を検討している個所である。

著者は決起した青年将校たちを、『国家改造法案大綱』で革命プログラムを示した北一輝に心酔する磯部らの「改造」主義者と、決起行動後の政治的プログラムはあまり考えていなかった多くの「天皇」主義者とに分けて考えている。

磯辺ら改造主義者の行動計画では、岡田首相をはじめ主要閣僚を殺害した後には、内閣総辞職などにより暫定内閣の成立が想定され、そうなれば、いわゆる皇道派の将軍による政権、ひいては決起青年将校政権が実現する可能性も彼らの視野にあり、情勢次第では、その実現の可能性もかなりあった。

しかし、これに対し断固として立ちはだかったのが、内大臣秘書官長・木戸幸一だった。岡田啓介首相が殺害され(実際には人違いで義弟が殺され、生きていたことが後日判明)、高橋是清大蔵大臣、斉藤実内大臣が殺され、鈴木貫太郎侍従長が瀕死の重症を負った状況で、宮内大臣、侍従次長と協議。

そこで下した結論が、「反乱軍の鎮圧」であり、そのためには、たとえ総理をはじめとする主要閣僚が殺害され不在でも、現内閣を維持して、「暫定内閣を作らせない」ことだった。

この非凡な政治的資質を有する木戸幸一の献策によって、多くの天皇主義将校らを率いながら国家改造を進めようとした磯辺らは敗北することとなった。

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