「人でなし」の治療法

片田珠美『無差別殺人の精神分析』(新潮選書、2009年)を半分余り読んだところ。

著者の女性は、阪大医学部、京大大学院で学び、仏政府給費留学生としてラカン派の精神分析を学んだ精神医学者。現在、神戸親和女子大学教授。臨床のかたわら、精神分析的観点から犯罪病理を研究している。

取り上げられている主な事件は、
1 秋葉原無差別殺傷事件
2 池袋通り魔殺人事件
3 下関通り魔殺人
4 大阪教育大池田小事件
5 コロンバイン高校銃乱射事件
6 ヴァージニア工科大銃乱射事件
――である。

どれも直後は大きなニュースになった過去十年余りの間に起きた事件ばかりで、今のところ1~4を扱った章を読了済み。特に、一番興味のあった4まで読んだ。残りは5、6のアメリカでの事件と、結論的な2つの章である。

池田小の犯人ですでに死刑が執行済みの宅間守は、専門家による記述・分析を改めて読んでみても、どうしようもない「人でなし」である。

物事がうまくいかなくなると、自分の努力不足などでなく、自分を生んだ両親からの遺伝も含めて、すべて他人や社会のせいにする。程度の差はあれ、他の犯人たちにも共通しているが、こうした傾向は「自責」の逆の「他責」的性格・傾向と呼ばれるらしい。

若い頃から事件やトラブルを繰り返し、精神障害と認定されると免責されることを覚えてからは、精神分裂病を騙って(いわゆる詐病)、罪を免れただけでなく、障害者給付まで受給する。

著者によれば、宅間は、社会的不適応の「人格障害」であって、統合失調症などの精神病や神経症とはいえない。ところが、最後の事件以前に彼を診断していた精神科医たちは、まんまと彼の詐病に引っかかって診断書を書いていた。著者自身も、精神医学者としての無力感を述べている。

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