落合博満、テリー伊藤、川上哲治

テリー伊藤『なぜ日本人は落合博満が嫌いか?』(角川、2010)を読んだ。

さすが『お笑い北朝鮮』や『お笑い大蔵省』を書いたテリー伊藤だけあって、落合をテーマにするとは、目の付け所が秀逸だと思った。

長嶋茂雄と王貞治は、野球界のスーパースターの中でも「例外的な存在」として除外するとしよう。そこで、例えば、野村克也や清原やイチローと比べて、落合は、記録・実績では、選手としても監督としても、勝るとも劣らない存在である。

何しろ、前人未到の「三冠王3回!」。監督としても8年間での成績が、3位の2008年を除いて、セリーグでの順位がすべて1位か2位である! しかも就任1年目は、補強をせず現有勢力で勝てると宣言し、有言実行。見事リーグ優勝をやってのけた。(対して、野村の監督としての生涯勝率は、ほぼ5割ジャストである)

これほどの実績を残しながら、これほど人気がない落合とは、一体どんな人間か。なぜ日本人は落合が嫌いか。いやむしろ、落合のような、サービス精神のない、プロとしてただ「勝つこと」だけのために、できることはあらゆることをなし、他のすべてを犠牲にできる存在、しかも必ず結果を残してきた存在を、今こそ日本人は最大限に評価すべきではないのか?

大学を中退してプロボーラーをめざし、その後、東芝府中という社会人野球の名門ならざるチームで頭角を現して、25歳でプロ入り。人気のないパリーグの弱小球団だったロッテで、自己流の打撃術を磨いて三冠王を重ねる。

その後の年俸交渉や、FA権行使による移籍、マスコミやファンへの無愛想ぶりなどから「オレ流」と言われてきたが、日本シリーズ史上初の完全試合目前での投手交代も、WBCサムライジャパンへの中日選手不参加も、実情を知れば、納得の行くものだった。

この落合に、9連覇という空前絶後の記録を成し遂げた川上哲治は、「監督として日本一の人材」と太鼓判を押したという。思うに、「打撃の神様」川上もまた、「名選手にして名監督」だったにもかかわらず、人気がない! 知る人ぞ知る、というべきだろう。

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