もう一つの鉄球

あさま山荘事件で山荘の破壊のために使われた鉄球とともに、僕にはもう一つ印象的な鉄球がある。

写真家で物書きの藤原新也の著書『東京漂流』の冒頭近くで描かれた鉄球である。ベストセラーだった頃、新宿の紀伊國屋で平積みになっていたりしたが、僕は天邪鬼なたちで買ったり読んだりしなかった。

読んだのは、ニューヨークから引き揚げて日本に戻った1990年代初め。
その鉄球とは、藤原氏の生家だった北九州門司港の大きな数寄屋造りの旅館が廃業することになり、壊されたときに使われたものである。

映像はもとより写真もない文章だが、その中に描かれた鉄球は、いわば「高度成長」の象徴であった。高度経済成長は、古い日本(自然や木造建築物)を破壊することによって邁進された。

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