「映像」の時代

図書館で借りた映像に関する2冊の新書を読んだ。その2冊とは「テレビの『嘘』を見破る」と「脳内イメージと映像」(読んだ後1冊ずつ返却したので書名が違っているかも、特に前者)。著者はともに、民放とNHKで日本のテレビ放送に草創期から携わってきた番組制作者である。

さて前者で言う「嘘」は、フジテレビ系の「あるある大事典Ⅱ」で大きな問題となったようなデータ捏造ではなく、今やバラエティ番組でも当たり前になっている「再現ビデオ」なども含めたドキュメンタリーにおける「作為性」をテーマにしたもの。歴史的な意義のある過去の事例も含めさまざまな立場が紹介されているが、著者は「ある程度の作為性なしに、良いドキュメンタリーを作ることはできない」と考えている。

例えば、戦前にソ連に亡命し、何十年ぶりかで帰国した女優の岡田嘉子が思い出の地を再訪する番組を制作した際のこと。旧ソ連領内をバスが長い道のりを走っていく車窓から岡田嘉子が外の風景を見ている映像は、帰りのバスで撮影したという。行きの行程では制作・撮影関係者も初めてなので、どこで撮ればいい絵(映像)が撮れるかわからないため、帰りに撮影するための候補地をチェックするにとどめたという。――この程度の「嘘」は、時間や予算など制約の多い中で映像作品を作る際に日常茶飯事である。

後者の「脳内イメージ」とは、私たち人間の頭の中にあるイメージないし視覚的像のこと。誰にもあるはずだが、外から、他人には見えない。一方、「映像」は映画やテレビ・ビデオなど、20世紀以降の科学技術の発展でますます身近になり、今後さらに普及、氾濫していくことが確実なものである。本書はこの両者をリンクさせ、多面的に論じた意欲的な論考である。技術の進歩により、ますます「脳内イメージ≒映像」化が進むことを予見している。

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